相続登記について

相続登記

不動産の名義人が亡くなられて相続人が故人名義の不動産を相続すると、新たな所有者となる登記をします。

不動産の所有権が故人から相続人に移転するので、「所有権移転登記」をすることになりますが、相続を原因とする登記なので「相続登記」と呼びます。

現在(令和5年時点)は、相続登記をせず名義を故人のままに放置していても罰則はありませんが、令和6年4月1日より相続登記が法律で義務となります。

対象は令和6年4月1日以降に発生した相続だけでなく、それ以前の相続登記をしていない全部の不動産が対象になります。

義務化されるまでまだ時間はありますが、長い間相続登記が放置されている場合、その間に新たな相続が生じ相続人の数が増え、相続人調査、全相続人による遺産分割協議等にかなりの時間を要します。

手続きが終了するのに半年、1年近くかかることもあるので、相続登記がまだの方は早急に司法書士にご相談下さい。

なぜ相続登記が必要なのか

法務局には不動産の権利関係を記録している登記簿が管理・保管されています。
登記簿には、不動産の所有権(所有者)をはじめ、地上権、賃借権、抵当権等々の不動産にかかわる権利関係が記録されています。

登記簿は誰でも見れ権利関係を公示したことになり、第三者に対して「対抗力」を有することになります。

「対抗力」とは、権利を争う相手と戦うための力です。
民法177条に「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と規定されています。

「登記」=「対抗力」となります。
「登記をしなければ、第三者に対抗できない」ということは、登記しなければ権利を主張する第三者に負ける、又は勝つことができない、ということになります。

権利を争うときの対抗力としての登記

相続登記に関係する権利を争うときに対抗力とは、どのようなケースを言うのか。
事例でご説明します。

相続人は長男Aと次男Bの2人。

登記対抗力1父親が遺言書を残しており、遺言書には甲土地は長男であるAに相続させると書かれていた。

 

登記対抗力2 次男Bは金銭を相続することで了解した。
相続で争うことはなかったので、Aは安心して急ぐこともないだろうとすぐに相続登記をしなかった。
そのまま登記自体も忘れて2年が経過した。

 

登記対抗力3Bは事業をしており、銀行から多額の借入をしていた。
当初、事業は順調だったが1年前から事業不振に陥り、この半年ほど返済を滞納していた。銀行は再三、返済督促をしたが返済されないので、Bに差押えられる資産がないか調査したところ、Bの亡父名義の土地が相続登記されていない状態であることを突き止めた。

 

登記対抗力4銀行は直ちに亡父名義の土地を法定相続割合に従ってA、Bの持分を各2分の1として相続登記をした(代位登記)。
同時に、B持分2分の1に対して差押えの登記をした。
※この一連の登記は、ABの承諾なしに銀行の意思のみで可能です。

又は、こんな事も、、

登記対抗力6お金に困っていたBがAに黙って法定相続割合にしたがって各2分の1持ち分とする共有の相続登記を行い、自分の持分を業者に売却した(通常、持分の売却価額は土地全部を売る場合の2分の1ではなく、かなり安くなります。)。

業者は取引と同時に自己を共有者とする登記を行い、Aに対して持分を買取るよう要求、応じない場合は共有物分割請求の裁判を起こします。
この裁判で合意できない場合、土地を売却して売却額を持分に応じて分割することになります。

 

登記対抗力7亡父名義の土地に対して先に権利登記をした銀行が「対抗力」を取得したので、Aはこの土地は全部を亡父から相続したものであり差押えを解除して欲しい、と言っても、銀行に応じる義務はありませんし、解除して欲しいならBの借金を返済して下さい、と言われることになります。

また、共有者となる登記をして「対抗力」を取得した業者に対しても、Aはその登記に対抗することはできません。

もし、Aがすぐに甲土地をA名義に変更する相続登記をしていれば、Aが先に「対抗力」を取得するので、銀行や業者は甲土地に手出しすることはできませんでした。

甲土地を相続するということは、所有権という権利を取得するということです。
そして権利を取得したら、ただちに登記をして「対抗力」を得ておかないと、取得したと思っていた権利を失うことになりかねません。

相続登記を放置するとこんな事に

事例:
被相続人(故人)は母A、相続人は兄長男B、妹長女Cの2人

母名義の土地に長男が家を建て、母と長男家族が同居していた。
長女Cは嫁いで遠方に住んでいる。
遺言書はない。
家族構成

長男家族はAの世話をずっとしていたので、長女Cは母名義の土地を長男が相続することに同意している。

この後、相続人である長男と長女で実印を押印した遺産分割協議書を作成し印鑑証明書を揃えて登記申請すれば、土地は長男名義になります。

しかし、登記をせずに放置していたら場合どうなるか?
相続登記を放置している間に相続人にいろいろな出来事が発生することがあります。

相続登記手続き前に相続人が亡くなったり、認知症になってしまうと手続きが複雑になってしまいます。

長男が亡くなる

相続登記前に相続人が亡くなると、亡母名義の土地の相続登記の当事者は、亡くなった相続人からその相続人である妻と子に移ります。

相続登記をするには、長男の妻と子が義理の妹と遺産分割協議をすることになります。

義理の関係にある妹に血縁関係のない義母名義の土地の相続について話し、遺産分割協議書への実印の押印や印鑑証明書を用意するようにお願いするのは簡単ではないでしょう。

また、子供が18歳未満の未成年者であれば、遺産分割協議をするために家庭裁判所に特別代理人を選任してもらわなければいけなくなり、時間も費用もかかってしまいます。
遺産分割協議2

長女が亡くなる

長女が亡くなると、手続きの当事者は長女の夫と子に移ります。

長男は、長女の夫と子と遺産分割協議をすることになります。
子供が未成年者であれば特別代理人の選任が必要になりますが、長女家族にとっては長男に土地を取得させるためだけに家庭裁判所に選任の申立をすることになります。
遺産分割協議1

認知症になる

長男や長女が認知症になった場合も、手続きが簡単ではなくなります。

認知症により、判断能力が必要な遺産分割協議はできなくなります。
長女が認知症になった場合、家庭裁判所に後見人を選任してもらって遺産分割協議を行うか、亡くなるの待って長女の相続人と遺産分割協議を行うかになります。

後見人による遺産分割協議では、後見人は被後見人である長女の利益の視点で判断するので、長男が土地を相続することに了承するかは分かりません。
遺産分割協議2

相続登記はできるときにすぐやることが重要

相続人間で相続について話しがまとまれば、すぐに書類(遺産分割協議書)にして手続きを進めることが重要です。

放置しておくと、相続人に状況の変化(お金が必要になったり等)が生じ、まとまっていた内容で書類を作成する段になって内容を変えてほしい、印鑑は押さない等々でもめてしまうことがあります。

また、当事者が亡くなると、その相続人が新たな当事者となり、人が多くなれば話しをまとめるのも難しくなるでしょう。
相続は「話がまとまった時に登記をして確定させる」が重要です。

登記がより重要に

相続法が一部改正され、「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。」とされました。

改正前は、「甲土地はAに相続させる」とする遺言書があれば、相続発生と同時にAが甲土地を承継し、登記がなくても第三者に対抗できるとされていましたが、この改正により相続させる遺言書があっても、法定相続割合を超える部分は登記をしなければ第三者に対抗できないとされました。

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