再婚家族

離婚が珍しくないように、再婚も珍しくありません。
先妻との間に子がいる場合、相続の問題が発生します。
再婚後の家族(妻、子)が先妻との子と良好な関係を築いているということは滅多になく、多くは一切交流はなく会ったこともない、よくて夫が先妻の子とたまに会う(これも現実は多くありませんが)、という状況がほとんどでしょう。

子供が生まれてすぐに、小さい時に離婚して妻が親権を取った場合、妻が会わしたくないこともあったりして、離婚後数十年も一切会っていないお父さんにとって、再婚後の家庭が全てになりがちです。

お父さんの中には、自分の財産は今の家族があって築いたものだから、目の前にいる妻や子供達だけに遺産を渡したい・・と思う方もいらっしゃいます。
(私としては、もしかしたら先妻とのお子さんは経済的苦境のもとで生活されているかもしれませんよ? ご自身のお子さんですよ? と思うところもありますが・・)

何も準備しなかったらどうなるか

何も準備をしないまま亡くなられて相続が発生した場合、必ず先妻とのお子さんが登場します。
自ら遺産をよこせと登場してくるというよりは、故人の遺産は相続人全員の協議により決定されるという法律に基づき、いわば強制的に登場させられ遺産分割協議に巻き込まれることになります。

相続手続き(不動産の相続登記、預金の解約、有価証券の名義変更等々)をする際、前婚のお子さんを含めた相続人全員の実印が押された遺産分割協議書及び印鑑証明書が必要になります。

会ったこともない者同士が故人の相続で初めて顔を合わせる、、、
もちろん、必ず顔を合わせる必要はなく、多くは故人が亡くなったこと、遺産分割はこちらでやるので同封の遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書と一緒に返送して下さい・・みたいな書類を送付することになるでしょう。
お願い通りに返送してくれる場合もあれば、敢えて相続放棄の手続きをされる方もいらっしゃいます。

問題は、捺印を拒否して法定相続分を主張された場合です。
こうなると本格的な話し合いになります。
まさに直接話し合って遺産分割の方法を決めなければいけなくなります。
相手と話し合うのが嫌な場合は、弁護士に依頼するしかありません。
※司法書士は決まった内容の遺産分割協議書の作成はできますが、内容を決める話し合いに関わることはできません。

遺言書を残す

遺言書を残しておくことで、相続人全員による協議を回避することができます。
有効な遺言書があれば、その内容通りに手続きされることになるので、遺言書に再婚家庭に全財産を相続させるような内容の遺言書を残しておきます。

ただし、注意しなければいけないのが「遺留分」です。
遺言書で前婚の子には一切相続させないような遺言書を作成しても、前婚の子には「遺留分」を請求できることが法律で認められています。

遺留分とは相続人である以上、最低限認められている相続請求権で、法定相続分の半分になります。
例えば、相続人が妻、子2人と前婚の子1人の場合、前婚の子の法定相続分は6分の1、遺留分はその半分の12分の1になります。
遺留分は請求権なので、請求されたら渡さなければいけませんが、請求されなかったら渡す必要はありません。
※再婚の子と前婚の子は全く同じ相続割合です。もっと言えば、母親とは結婚せずに認知だけした子も同じ相続割合です。故人の子である以上、みな平等です。

方法としては、遺言書には全財産を再婚家庭に相続させる内容で書き、請求された場合に備えて遺留分相当額の現金を確保しておく(例えば預貯金や生命保険金等で)ことが考えられます。
又は、初めから遺留分相当額を相続させるような遺言書を書くというのもあります。
相手が受け取るのが嫌なら相続放棄するでしょう。

その他の方法として

以外の方法として、

  • 家族信託(相続財産を妻や子の管理下に置く)
  • 生前贈与(配偶者への生前贈与、暦年贈与等々税制優遇措置有)
  • 相続時精算課税制度(生前に家族に贈与し課税は死亡時の相続税)

等々が考えられます。
ただし、いずれも「遺留分」対策は必要ですので専門家と相談しながら行うことが相続争いを防ぐために必要でしょう。