
人が亡くなり相続が発生すると、故人名義の不動産は全て相続登記の対象となります。
不動産登記法には、土地だけで20種類以上の土地が規定されています。
宅地や田、畑、山林、保安林、雑種地などが通常の相続でみられる土地の種類ですが、中には塩田や鉱泉地、ため池などほとんどの方にとっては相続することはない土地もあります。
相続登記は令和6年から法律で義務化され、違反した場合は10万円以下の過料という罰則規定もあります。
相続登記する上で、故人の不動産をしっかり相続人に登記する必要があります。
土地を相続するとき、先に示した宅地や田のような一般的な土地もあれば、たまに特殊のものが含まれていることがあります。
ここでは、特殊なものとして公衆用道路がについて解説します。
公衆用道路
ここでいう公衆用道路は国道や市道のような公道ではなく私道、「わたくしどう」のことです。
当該土地の登記簿を見れば、地目の欄に「公衆用道路」と記載されています。
公衆用道路は、国道や市道のような公道とは違い私有地を一般交通のために道路として使われています。
一般公衆のための道路をなぜ私人が所有しているか?疑問に思われるかもしれませんが、広い土地を宅地として開発して造成地内を区分けして何十、百もの家を建てようとする場合、
当然、各家々から公道に出るまでの道を造成地内に作らなければいけません。
この道は国や都道府県が作るのではなく開発業者が作るのですが、この造成地内の道も土地ですので所有権が発生します。
大規模開発であれば開発業者が所有者となり、その後、県や市などに寄付して公道とする場合もありますが、多くは、開発業者名義だったり、周辺地の宅地購入者だったりします。
公衆用道路も相続登記が必要
私人名義の公衆用道路は、道路であっても当然、名義人のもの、名義人が道路である土地の所有権者です。
相続の際、家とその宅地だけを相続によって名義変更して、公衆用道路は気づかずに名義変更をしていない場合が少なくありません。
相続登記をする際、税金として納める登録免許税の計算資料として固定資産税納税通知書を使いますが、この通知書に公衆道路は記載されていません。
私有地ではありますが、道路として使われている公衆用道路には固定資産税が課税されないからです。
よって、固定資産税納税通知書だけを見て相続登記をすると、公衆用道路が見落とされてしまいます。
私有地を道路にしてその所有権者になった目的は、自分が所有者として道路を使うためです。
相続するときも、忘れずに公衆用道路についても相続登記することが必要です。
上記の図で一番奥の家の所有者であるAさんが亡くなられて相続手続きをする場合、家、宅地の他、公道につながる私道である公衆用道路の権利関係を調査する(この土地の登記簿を見る)必要があります。
開発業者名義であれあば何もすることはありませんが、共有持分権者としてAさんが名義人になっていたら、その名義を相続人に変更する必要があります。
また、役所に行って故人の名寄帳を取得する方法もあります。
名寄帳には、管轄地域内の故人名義の不動産が全部掲載(固定資産税非課税分も含む)されていますので、これを見れば分かります。
遺産分割協議書作成の際にも注意
新築物件で上記のような売家があります。
俗に言われる「旗竿地」です。
一番奥の土地に着眼すると、公道までつながる土地を含めて旗竿のように見えるので、このように言われています。
竿になっている部分が公道につながる私道(公衆用道路)になっています。
この竿の部分の土地は3軒建っている家の所有者が共有して所有していることが多いです。
このような家の並びで、一番奥の所有者が亡くなり相続人で遺産分割協議をして長男のAさんがこの家を相続すると決めた場合、遺産分割協議書に「家と宅地は長男Aが相続する」というような内容の協議書を作成するどうなるか?
家とその敷地である土地は長男名義に相続登記できますが、公衆用道路の故人名義の持分は相続登記できない、、ということになってしまいます。
まとめ
公衆用道路は名の通り道路ですし、見た目ではなかなか公道と私道の区別がつきません。
一見しただけで家とその敷地である土地をだけが相続の対象のように見える場合でも、実は家の前の道路は公道ではなく私道で、それを使用する権利として一部(持分)を有してたということも珍しくはありません。
相続登記は十分調査して行う事をおススメします。
分からない、不安だ、という方は相続の専門家である当事務所にご相談下さい。