遺言書を作成すれば安心?

相続が争族になってしまう原因は、相続人間で行われる遺産分割協議にあります。
この協議で主張が対立し溝を深め、結果、深刻な争いになってしまいます。

この協議を回避するには、遺言書を作成することが有効です。
遺言書があれば書かれている内容通りに遺産分割されるので、相続人同士で相続について話し合うことはありません。
書かれている内容に不満があっても従うしかありません。
これにより、相続人間の無用な争いを防ぐことができます。

ただし、その遺言書も万能ではありません。
作成方法や書かれている内容等で争いになることがあります。

実際に裁判で遺言書に関して争われた事例をご紹介します。
※分かりやすく一部内容を変更しているケースがあります。

東京地平成28.3.25

相続時の状況と争点:
遺言者X。相続人は子A、B。自筆証書遺言の署名部分に印なし。契印・封印が不明瞭。Bが遺言書の効力に疑義、Aが遺言書の有効確認を求める。
判決:
契印はXの実印と認められる。封印も実印とみて矛盾はない。Xの遺言書は有効と判断。

最判27.11.20

相続時の状況と争点:
遺言者Aは、相続人の1人子Bに財産の大半を相続させる旨の遺言書を作成(日付、自署、押印有り)。A死亡後に遺言書を見ると、Aによって赤ボールペンで全体に斜線がひかれていた。他の相続人が本遺言書の無効を主張。
判決:
遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当。一部の抹消の場合と同様に判断することはできないとし、赤ボールペンで全体に斜線を引く行為は、故人が故意に遺言書を破棄したとして遺言書は撤回されたものとみなされるとした。

最判平成23.2.22

相続時の状況と争点:
遺言者X。相続人は子A,B。遺言者Xは全財産をAに相続させる旨の遺言書を作成。その後、Aが先に死亡、後にXが死亡。BがAの相続人に対しXの遺産について自己の相続持分を請求。
判決:
X死亡時にAは既に死亡しているので、Aに相続させるという遺言の効力は生じないとし、Bの法定相続分を認めた。

最判平14.9.24

相続時の状況と争点:
故人Aが妻Bに財産全部を相続させる旨の秘密証書遺言作成。他の相続人により形式が民法規定に従っていないと無効主張。
判決:
遺言書は市販の遺言書文例のまま名前だけを入れ替えてWがワープロで作成している。当該遺言書の筆者はWであり、Aは公証人に筆者の名前、住所を言っていないので無効と判断。

最判平11.9.14

相続時の状況と争点:
A入院、A意識回復後にAが相続人の1人Bに遺言書を作成するよう指示。Bが弁護士と草案を作り、医師3名の立合い、医師の1人が内容を読み上げAが返事をする形で遺言書を作成。他の相続人が遺言書無効を主張
判決:
民法規定の危急時遺言形式の要件を満たしており有効と判断した。

最判昭62.10.8

相続時の状況と争点:
Aが遺言書作成。その際、妻Bが添え手による補助をした。他の相続人が遺言書は自書されたものではなく偽造だとして無効主張。
判決:
Aの手の震えを止めるためBが手の甲を上から握って支えただけでは、到底本件遺言書のような字を書くことはできず、Aも手を動かしたにせよ、BがAの声を聞きつつこれに従つて積極的に手を誘導し、Bの整然と字を書こうとする意思に基づき本件遺言書が作成されたもので無効とした。

最判昭和37.5.29

相続時の状況と争点:
遺言書が数枚に分けて作成されているが、契印、編綴なし。相続人の1人が遺言書の無効を主張。
判決:
遺言書は二葉にわたり、その間に契印がなくまた綴じ合わされていないが、それが一通の遺言書であることを確認できる限り、遺言書は有効であるとした。

福岡高平26.10.23

相続時の状況と争点:
Aに家督相続人として家督と財産を承継させる旨の自筆証書遺言あり、日付、署名あるが印でなく花押が押印されていた。Aが遺言書に基づき財産の所有を主張。
判決:
花押は民法に規定される印とは言えず、遺言書は無効とした。

大阪高平19.3.16

相続時の状況と争点:
故人Aが同居していた子Bに家を相続させる旨の秘密遺言証書作成。子Cが本遺言書は意思能力がない状態で作成されたと無効主張。
判決:
意思能力があった旨の医師の診断書があるが、当該医師が専門医でなく医学的見地に基づく根拠がない。表面的に会話できるように見えても、意思能力が認められる理由にはならない。秘密証書遺言は自書する必要がなく、署名、押印で作成できるから、遺言内容を秘密にすることよりも、遺言能力に疑問があって、署名、押印しかできない者の遺言書を作成するために使用される危険のある方式である。また、証人の住所記載や修正方法に誤りがある。これらにより遺言書は無効と判断。