遺言相続

ご自身が亡くなった後の相続が心配で相談される方に、我々司法書士はよく遺言書を書いておきましょうとお伝えします。
遺言書がなければ、相続手続きは相続人全員で話し合って決めていくことになります。
そして、この話し合いの中でいろいろといざこざが起き、仲が良かった家族でも深い溝ができてしまうことがあります。
血のつながった家族以外にそれぞれの配偶者、知人の意見も入交り、一旦もめてしまうとなかなか解決できません。
最後は家庭裁判所に、、、。

原因となる相続人による話し合いを避けるには、遺言書を書いておくのが最適です、、が、時には遺言書が原因で余計争いになってしまう場合もあります。

遺言書が原因になる揉め事

相続人間の話し合いにおける揉め事を回避するために作成した遺言書がかえって揉め事の原因となることがあります。
遺言書もただ書けばよいというものではなく、形式に従って作成し、内容もみんが納得できるように書くのがベストです。

しかし、故人と相続人の関係などいろいろな事情で相続人間で受け継ぐ遺産に差がでたりすることもあります。
遺言書の内容に納得できない相続人もでてくる場合もあると思いますが、その場合でも争いにならないように、遺言書にそう書かれていたのなら仕方ない、、と収めることが重要です。

自筆証書遺言のリスク

ご自身で書いた遺言書を自筆証書遺言と呼びます。
遺言書は、ご自身でいつでも、好きなときに自由に書くことができます。
「全て自分で手書き」「年月日の日付を書く」「署名、押印する」のように守らなければいけない形式はありますが、どこでも、いつでも好きな時に書ける遺言書です。
※改正により財産目録は手書きでなくてもよくなりましたが、押印義務等注意しなければいけないことがありますので、一般の方が自身で書く場合は、「全部自分で書く」と覚えていた方がよいでしょう。

簡単に作成できる遺言書ですが、簡単がゆえに問題になることがあるので注意が必要です。

見つけてもらえない

自分で書いて自分で保管していると、亡くなった後、遺言書を見つけてもらえない可能性があります。
書いたときは、相続人や関係者に遺言書を書いたこと、保管場所を教えておくことを検討しましょう。
言いずらい場合もあるでしょうから、そのときは、保管場所を通帳等と同じにすれば見つけてもらう確率はグッと上がります。

改ざんされる

封をされていてもきれいに封を開けて中身を取り出すことはできなくもありません。
開封して中身を見た相続人によって改ざんされるおそれもあります。
数字を変えたり、横線を引いて削除、訂正したかのようにするケースが考えられます。

破棄、隠される

よくあるのが、見つけた人が隠す、黙って廃棄するパターンです。
このパターンでは、故人の生前の言動、故人との関係から中身を見るまでもなく自分に不利なことが書かれていると思っている相続人によって行われます。

嫁にいった長女に生活費の援助、家を購入する際の援助、孫の教育費の援助等々で多額のお金を既に渡していて、「もう、十分すぎるほどお前には渡しているから、俺が死んだら遺産は全て母さんと妹にやる、、、」と言われていた長女が真っ先に遺言書を探して隠す、、、なんてことも。

リスクが現実になったら

民法891条で相続人がある行為をしたら相続人としての資格を失い、一切遺産を受け継ぐことはできないと規定されています。
そして、その行為の中に、

  • 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  • 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

が挙げられています。
改ざんや廃棄、隠蔽したら、何も相続できなくなるのですが、そうするには、それを行ったことを証明しなければいけません。
改ざんであれば筆跡鑑定、強迫や詐欺、隠蔽、廃棄したのであればその事実を裁判で証明しなくてはいけません。
簡単ではないですし、とても負担になります。

対策

改ざんや隠蔽を防止するには、信頼できる第三者(親戚、知人等々)に遺言書があること、その保管場所を教えておいたり、預かってもらっておくことも良いでしょう。
ただし、その方たちを相続争いに巻き込んでしまうおそれもありますが、、、

また、新しい制度として、法務局で自筆証書遺言を保管してくれるようになりましたので、これを利用するのも良いでしょう。

最善策は自筆証書遺言は避けて公正証書遺言で作成することと言えるでしょう。
戸籍謄本や不動産の評価証明が必要だったり、公証人にもそれなりの報酬を(司法書士に依頼したらその報酬も)払うことになりますが、改ざん、隠蔽、廃棄は防げます。