古家

実家で暮らしていた親御さんが亡くなり、遠方に住んでいる子が家を相続することになるケースはよくあります。
この場合、相続した土地、家をどうするか?

相続財産である家の処分方法

  1. 実家に移り住む。
  2. 賃貸にして賃借人を探す。
  3. 家を取り壊して更地にして保有する。
  4. 放置する。
  5. 相続放棄する。
  6. 売却する。

上記のような対応が考えられます。

実家に移り住む。

相続人がお一人であれば全く問題ありませんし、複数人であれば話し合って決めることになりますが、後々のトラブルを防ぐためにも遺産分割協議をして名義を住む方に変更するための相続登記をすることが重要です。

賃貸する

実家の状態によってはかなりの修繕が必要になることもあるので、地元の不動産業者に賃貸の需要の有無、賃料相場を聞いて判断されるのが良いです。

賃貸の場合の注意点として、通常、大家さんには修繕義務があります。雨漏り等々の不具合が発生した場合は、賃借人との間で修繕や損害が生じた場合はその賠償等の話し合いをしなければいけません。

遠方にお住まいであればその手配が大変だったり、そもそも賃借人と話し合いをしたくないというような方は、地元の不動産会社を管理会社として全てを任せた方が良いでしょう。

更地にする

何故更地に? 固定資産税も上がるのに?と思われるかもしれません。

家は人が住まなくなったら急激に老朽化すると言われます。

周辺に何もない環境の家であれば良いですが、隣との距離も近ければ老朽化により近隣に被害を及ぼすおそれがあります。
大型台風がきたりすると、近隣の人達は心配でしょうしそれによりトラブルに発展しかねません。

予め、更地にしておけばこのような心配をせずに済みます。

放置する

現実的に少なくないケースです。

当所は、取りあえず放置、どう処分するかはおいおい考えて、、が多いと思いますが、それがずっと放置したままになってしまうことがあります。
この場合も、老朽化による管理責任が問題になってきます。

相続放棄をする

過疎地で古い家なんていらない、相続放棄をすれば家、土地とは全く関係がなくなる、、、と思われている方もおられますが、そうとは言えません。

自分以外の相続人が家を相続してくれたら良いのですが、全員が相続放棄してしまったら状況は変わります。
民法では、自分が放棄することで相続人となった者が家(相続財産)の管理を始めることができるまで、自分の財産と同様の注意をもって管理しなければならないと規定されています。

自分の家と同様の管理義務なので、その家が原因で他者に損害が生じると賠償責任を負うことになります。

相続人全員が相続放棄したら誰も管理する人がいないことになりますが、その場合、管理していくれる人として相続財産管理人を家庭裁判所に選任してもらうよう申立することになります。

しかし、手続きにはかなりの費用がかかるので、実際には選任申立することなく放置された状態が多いです。
この場合、管理責任は依然と放棄した人にあるということに注意下さい。

売却する

遠方に住んでいて自分の家もあり、実家に住むことも使うこともない、という方は売却が一番良いでしょう。
もちろん、買い手がいないとどうしようもないですか、地元の不動産業者と相談しながら進めることになるでしょう。

今回は、この売却する場合について注意すべきポイントを司法書士が解説します。

相続した実家の売却方法

一番簡単なのは、まず、地元の不動産業者を何軒か回り、買い手が見込めるか、売値・買値はいくら位になるかを自分なりに調べましょう。
また、案外、お隣が買ってくれる場合もあるので話してみるのも良いかもしれません。

また、今の家をそのまま売りに出すか、リーフォームして売りに出すか、家を解体して更地として売りに出すかの検討も必要です。

実際に売りに出す場合も、仲介してくれる不動産業者とどのような形で契約するか決めなめればいけません。

契約方法は、大きく分けて「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3つの種類があります。

「専属専任媒介」は契約した不動産業者1社のみに仲介を任せる契約です。

「専任媒介」も業者1社のみと契約して仲介を任せる契約ですが、自身で買い手を見つけて売買することも認められています。

「一般媒介」は自由に何社とでも契約できる形態です。

「専属専任媒介」、「専任媒介」は一度契約したらずっとそのまというのではなく、両方とも契約期間は基本的に3ヶ月以内と決まっています。

実家の周辺環境、不動産業者の印象・相性・感触等々を考慮して決めるのが良いでしょう。

相続した家を売るときに注意すべき3つのポイント

相続した家を売却する場合、注意しなければいけない3つのポイントがあります。

  1. 家が古い場合、不具合がないか?
  2. 土地の境界に問題はないか?
  3. 土地の権利関係は大丈夫か?

家に不具合(欠陥)がないか

中古の家を売る場合、全部きれいにリーフォームして売るケースもあれば、そのままの状態で売るケースもあります。
業者であればリーフォームで付加価値付けて高く売ることが多いでしょうが、個人であればそのまま売ることの方が多いでしょう。

この場合、注意しなければいけないのが家の欠陥です。
欠陥でも見える部分であれば、売買する前に買主に説明して了解を得る、又は、その分値引きするというような対応ができます。

問題は見えない、気付かない部分の欠陥です。
買ったらすぐに雨漏りした、シロアリが見つかった、柱が腐って傾いてきた等々。

売買後、これらの欠陥、不具合が見つかったらまずトラブルになります。
買う立場で考えたら、買ってすぐに数百万の修理が必要になり自分が支払うことに納得できない方もいらっしゃいます。

知っているのに黙ったまま欠陥住宅を買わされたと思うかもしれません。
いずれにしろ、修理費用の負担についてトラブルになるでしょう。

このようなトラブルを回避するには契約書の内容が重要になります。
以前は、見えない欠陥についての責任を「瑕疵担保責任」と言って、民法に規定されていました。

しかし、当該規定が改正され「契約不適合責任」に変わり、隠れている、隠れていないに関係なく全ての不適合(欠陥)が対象となります。
改正民法では、この不適合(欠陥)を「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」と規定しています。

不適合がある場合、不具合の内容によって「追完請求(修理請求)」「代金減額請求」「損害賠償請求」「契約解除」が認められることになります。

このように契約の内容と違うものが不適合とされるので、契約書の内容をどのようにするかが重要になります。
契約書に不動産の現況、現状分からない不具合が生じた場合の対処、条件等を明示しておくことで不要なトラブル、責任軽減を図ることができます。

土地の境界問題

隣接地との境界について問題がないか確認しましょう。

境界には2種類あります。
「所有権界」と「筆界」です。

所有権界は、個人の所有権としての境界です。
お隣同士でこれを境界にしましょうと決めた境界が所有権界になります。
何十年も経過するにつれ境界があいまいになり、「ここまでが俺の土地だ」と争いになったりすることもあります。

筆界は、法務局で保管されている地図(公図)に記載されている境界です。
公法上の境界と言えます。

ただし、筆界=所有権ではないので、筆界通りに所有権の範囲が決まるものではありません。

土地を売却する際、買主が取得後に隣接地の所有者と境界について争いにならないように、事前に隣地所有者も交えて境界確認の立合いを行います。
これは仲介の不動産業者が手配してくれるので、境界に争いが無ければ問題ありません。

境界に争いがあると、やっかいな事になります。
争いを解決して境界を確定しないと、売ることはできないでしょう(売り出すことはできますが、争いのある土地を買う人はいないでしょう)。

解決には、隣接地所有者との話し合い、筆界特定制度の利用、境界を確定させる訴訟等が必要になります。

また、相続した土地が「筆界未定地」である場合も注意が必要です。

いろいろ理由(境界に争いがある等)で筆界を確定できなかった土地なので、そのままだと売ることは難しいでしょう。
前述と同様に、売却前に境界を確定する必要があります。

※争いのある土地をあえて購入する業者もいるので(当然、買取価格は激安になります)、面倒を避けたい方は検討の余地ありです。

土地の権利関係

売却前に土地の権利関係を確認しましょう。
家と共に土地も故人が所有していたと思っていたが、借りていた土地だった、ということもあります。

抵当権が付いている場合は、抵当権者(銀行等)に債権額が残っていないか確認しましょう。
完済していても抹消せずに残っていることがあります。

特に根抵当権は、全額返済してもあへて抹消しないケースが多いです。
完済していたら抹消の登記をして売却することになります。

注意すべきは、休眠抵当権です。
明治や大正、昭和初期くらいに設定された抵当権で、長らく休眠状態で放置されていることがあります。

完済しているかどうか分からない、抵当権者が見つからない、抵当者が亡くなっていてかなりの数の相続人がいる等々の問題がある場合は、抹消するの簡単ではありません。
抹消するには時間がかかりますので、早めに専門家である司法書士にご相談下さい。