不在者相続

相続手続をしたくても、共同相続人の内の1人に連絡がとれない。
何年も前から音信不通で、どこに住んでいるのか、生きているのかさえ分からない。

このような状況で、どこにいるかも分からないのだからその者を除いて遺産分割をしてもいいだろう、と思われるかもしれませんが、それはできません。

相続人である以上、その方には相続権があります。
行方不明であっても、その方の相続権を無視して手続を進めることはできません。

家族関係は多種多様、家族や親族間で音信不通、居場所さえ知らない、生死も不明、という状態は、特殊なケースとは言えなくなっています。

ここでは、不明な方が相続人であった場合の相続手続について解説します。

不明の種類

不明といっても、不明の内容によって対応が異なります。

単に音信不通の状態であれば居所も分かっているでしょうから不明者にはなりません。

いきなり電話で話すことに躊躇されるのであれば、手紙を送って事情をお伝えした上で、遺産分割協議に協力してもうらうようにお願いすることなります。

居所が分からない

電話番を知らず(又は通じない)居所が分からない、知っていた居所に住んでなくて移転先が分からないような場合、居所が探すことになります。

戸籍の附票(住所移転の変遷が記録されている)や住民票を取得して調査することになります。

当人が移転先の役所に住民票を移していれば、この調査で現住所が分かりますが、移していなければ調査が難しくなります。

この場合、最後に住んでいた所に行ってご近所や管理人、地元の不動産等に聞き込みをする、のような調査をするか、探偵のような専門家に依頼するか等になりますが、時間も費用もかかり、見つかる保証もありません。

行方不明

このように、電話連絡もとれず、戸籍等からも居所が分からない場合、行方不明者として相続手続きをすることになります。

この場合、考えられる対応として2っの方法があります。

  • 失踪宣告する。
  • 不在者財産管理人の選任申立をする。

失踪宣告

失踪宣告は、行方不明者を法律上死亡したものとして扱う手続です。

失踪宣告には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。

「普通失踪」は、行方不明から7年間生死不明な場合に、特別失踪は危難(事故等)が去っから1年間生死が不明な場合に、家庭裁判所に申立を行います。

単に居所が分かりません、では認めてもらえません。
捜索したが見つからなかった、という状況が必要です。

申立の際、「失踪を証する資料」の提出が求められるので、警察に提出した行方不明者届(捜索願)や失踪者宛に出したが不明として戻ってきた手紙、行方不明になった経緯等の説明書等々、いろいろな資料をできるだけ多く集めて提出します。

申立が認められれば、普通失踪者は失踪から7年間の期間が経過した時に、特別失踪者は危難が去った時(事故が発生した日)に死亡したものとみなされます(認定死亡)。

これにより失踪者の(法律上の)死亡日が確定するので、失踪者は死亡したものとして被相続人の相続手続をすすめます。

確定した失踪者の死亡日が被相続人の死亡日より早ければ、失踪者に子供がいれば代襲相続が発生しているので、その子供が相続人として遺産分割協議に参加することになります。

後であれば、失踪者に配偶者や子供がいれば数次相続が発生しているので、その者たちが参加します。

不在者財産管理人

不明の相続人に代わって相続手続をする者として不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらう方法があります。

不在者財産管理人は,不在者のために財産を管理し,財産目録を作成し家庭裁判所に報告します。

相続手続においては、失踪者に代わって遺産分割協議に参加することになります。
但し、この行為は不在者財産管理人に与えられた権限を超えるものとなるので、権限外行為として家庭裁判所の許可が必要となります。

どちらを選択するか

いくつかの面で検討します。

金銭的な面から検討すると、失踪宣告の方が良いと言えるでしょう。

裁判所に払う申立費用は、7,000円前後で収まります(別途、不在者の戸籍謄本や戸籍の附票等の取得費用や失踪を証する資料の作成費用が必要になります。)。

対して、不在者財産管理人の選任は、申立自体は数千円程度と非常に安いのですが、管理費や管理人に対する報酬を予納金として裁判所に納めなければならなく、この予納金が結構高額になります。

大体、数十万円から100万円前後になる場合もあります。

次に、遺産分割協議を決める流れから検討します。

失踪宣告をした場合、失踪者に相続人がいれば、その者が遺産分割協議に参加することになります。

通常の遺産分割協議と変わりなく、当事者間で分割方法を決めていくことになります。

対して、不在者財産管理人を選任した場合、不在者財産管理人(弁護士等※1)は不在者の利益のために遺産分割協議に参加し、内容も裁判所の許可が必要になるので、他の相続人の意のままに分割方法を決めることはできません。

※1.申立時に親族を不在者在者財産管理人の候補者として挙げることができ、裁判所の判断で当該候補者が不在者財産管理人に選任される場合もあります。

次に、期間の面から検討します。

通常の行方不明で適用される普通失踪は、行方不明になってから7年を経過していなければ使えませんし、手続自体も約1年程度とかなりの期間を要します。

対して、不在者財産管理人の選任手続は、1~3ヶ月程度ですみます。

また、懸念すべき事として、普通失踪は生死が分からない状況で当人は死亡したものとして扱うので、後日、当人が現れる、という事も十分あり得ます。
生存が確認され失踪宣告が取り消されると、相続財産や生命保険の返還義務(残っている部分に限定)が発生し、非常に面倒な事になるおそれがあります。

相続はそれぞれ状況や事情が異なるので、一概にどちらが良いとは言えないので注意が必要です。

専門家である弁護士や司法書士に相談されることをおススメします。

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