
夫(妻)が再婚で先妻(先夫)との間に子供がいる。
妻(夫)が再婚で連れ子がいる。
前婚で子供がいる方が再婚する場合も多くなりました。
これにより、前婚の子と再婚の子が相続人になることになります。
このようなケースでの相続について、問題点や注意すべき点を司法書士が解説します。
子の相続権
再婚相手に子供がいるケースも多くなっています。
夫の子供は先妻と暮らしていることが多く、妻の子供は、いわゆる連れ子として再婚することが多いでしょう。
再婚によって新たに子供を授かることにより、将来、前婚の子と再婚の子が相続人となる相続が発生することになります。
前婚、再婚の子に相続で違いはありません。
相続割合は同じです。
例えば、子が生まれてすぐに離婚し、子は妻が引き取り夫はその後再婚、再婚した家族と40年ずっと暮らし先妻との子とは離婚後全く会っていない。
このような場合でも、先妻の子と再婚の子の相続割合は全く同じです。
連れ子の相続
妻が実子を連れて再婚。入籍をして夫と妻、そして妻の連れ子の3人で仲良く暮らしている中で、不幸にも夫が亡くなってしまたったら、夫の相続人は妻と連れ子になるか?
なる場合とならない場合があるので注意が必要です。
結婚により女性は夫となる男性の戸籍に入籍します。
これにより婚姻関係が法的に成立します。
では、妻の連れ子はどうなるかというと、婚姻により一緒に夫の籍に入るということはありません。
あくまで母の子であり、再婚相手とは法的な親子関係は生じません。
この状態で再婚相手の夫が亡くなると、相続人は妻と夫の両親(又は兄弟姉妹)となります。
夫は再婚で先妻との間に子がいれば、再婚した妻と先妻の子が相続人となります。
親が結婚しただけでは、その連れ子は結婚相手の相続人にはなりません。
連れ子が相続人になるには、結婚相手と養子縁組をする必要があります。
普通養子縁組という比較的簡単にできる養子縁組をすることで、再婚相手の夫との間に法的親子関係が成立し、これにより連れ子は再婚相手の相続人になることができます。
※連れ子に遺産を残したい場合、養子縁組ではなく遺言書を書くことでも可能です。
子供間の相続問題
養子と実子、前婚の子と再婚の子の間に相続に関して違いはありません。
全く同じ権利を有しています。
それぞれの立場、環境が違う子供間ではもめる可能性が高くなります。
とくに問題になりやすいのが、夫(妻)の前婚の子と再婚の子です。
前婚の子は離れて暮らしている場合が多く、同じ親の子でありながら交流がないケースがほとんどです。
親が亡くなって初めて会う、話すような状態で、相続問題を処理するの簡単ではありません。
相手に経済的余裕があれば、交流のなかった親の相続に係わるのを嫌い相続放棄をする場合もありますが、法定相続分を主張されると遺産分割協議が必要になります。
再婚の子が2人、前婚の子が1人であれば、均等に3人で分ければ済むことで問題ないのでは?
と思われるかもしれませんが、そう簡単にはいかないのが相続の難しさです。
特別受益・寄与問題
特別受益は、特定の相続人だけが故人から受けた利益を言います。
他の相続人は、この利益を当該相続人の相続分から差し引くよう主張することができます。
寄与分は、特定の相続人が故人の看護、生活費等の支援、財産の管理等を行い、故人の財産からの支出を抑え、又は増加するのに特別の寄与をした場合に認められます。
寄与した相続人は、寄与した分の額を他の相続人より多く相続することができます。
前婚・再婚の子に関して言えば、
- 父が一緒に暮らしていない前婚の子にまとまった金額を渡していた。(特別受益)
- 父が一緒に暮らしている再婚の子に車の購入費用、留学費用、新居購入の際の援助等々をしていた。(特別受益)
- 父と同居している再婚の子が、認知症になった父を介護していた。(寄与分)
- 再婚の子と折り合いが悪かった父は、再三、前婚の子に金銭的援助を求めていた。(寄与分)
上記のようなケースで、当事者から特別受益や寄与分の主張がされると、これらを調整して遺産分割することになり、この調整でもめることになります。
遺産に不動産がある
特別受益や寄与分の主張もなければ、法定相続分通りに分割することになります。
遺産が現金、預貯金であれば簡単に分割できますが、遺産の中に不動産があると問題になることがあります。
不動産の評価額
被相続人と同居している相続人が居住の継続を希望する場合、その相続人が他の相続人に対し相続分に相応する対価を支払うことになります(代償分割)。
例えば、遺産が家・土地(1,000万円)、預貯金200万円の計1,200万円で相続人は子2人の場合、それぞれの相続分は600万円になります。
居住のために1人が1,000万円の家・土地を相続すれば、相続分を400万円オーバーしているので、この400万円を他の相続人に支払うことになります。
ここで問題になるのが家・土地の評価額です。
不動産を評価するのにいくつかの方法があります。
固定資産評価額、路線価、不動産鑑定士による評価、不動産会社による評価等様々な方法があります。
どの評価方法を採用するかは決まっていません。
家を相続する相続人は他の相続人に支払う代償額が少なくなるように評価額の低いものを、他の相続人は逆に高いものを採用するよう主張し合うことになります。
まとまらなければ、最終的に裁判所に決めてもらうことになります。
不動産が売れない
不動産を売却して売却金を遺産分割する、いわゆる換価分割により遺産分割を行うことがあります。
すぐに売却できれば問題ないですが、売却までにかなりの期間を要したり、買い手が見つからないこともあります。
この場合、
売れるまでの間、誰が管理するか?
固定資産税は誰が負担するか?
売れなかったらどうするか?
という問題が出てきます。
いずれにしろ、相続人全員で協議して決めることになります。
その時になってもめないように、事前にこれらの問題に対する対処方法を遺産分割協議書に記載しておくことが大切です。
まとめ
血のつながった兄弟姉妹であっても、行き来のない者がいきなり会って相続をまとめるのは難しいでしょう。
前婚、再婚の子供が協議するような状況を回避するには、遺言書を書いておくのが最適です。
遺留分を考慮し、遺言執行者を指定しておくことで、相続人間の無用な争いを防ぐことができます。