故人に遺言書がなく、遺産の分割方法を相続人間の協議(遺産分割協議)で決める過程で、意見が食い違い争いが生じてしまうことがあります。
食い違いを当事者間で調整できれば良いのですが、できなければ争いが長期化してしまいます。

このような状態は当事者にとって何のメリットもありません。
溝が深くなり、嫌悪が増大し、互いにただ疲弊していくだけです。

仮に、そのまま放置してしまうと、故人名義の不動産は故人名義のままになってしまいます。
令和6年より、不動産について相続登記をすることが法律で義務化され、怠ると10万円以下の過料が課せられるようになります。
これは、令和6年以前に発生している相続も含めてすべての不動産が対象となるので、いずれは話し合って解決しなければいけません。

相続登記せずに放置しておくことは、問題の先送りではなくさらに状態を悪化させることになります。
現在の相続人が亡くなれば、その子供全員が新たな相続人となります。
関係者が多くなれば、余計にまとめることが難しくなります。
親の争いを子に引き継がせるようなことは防がなくてはいけません。

このような状態になる前に当事者間で解決するのは難しいと思ったら家庭裁判所に解決をお願いする方法があります。
これを「遺産分割調停」と言います。

遺産分割調停について

「遺産分割調停」を行うには、相続人が所定の申立書及び必要書類を添付して家庭裁判所に調停の申立てをします。
申立ては、相続人全員でも内1人からでもできます。

調停は裁判官ではなく調停委員と呼ばれる方によって行われます。
調停委員は社会的経験が豊富で、専門的知識を持たれているような方が選任されており、当事者間に入って話しをまとめるよう尽力されます。

調停では調停委員が当事者双方から事情を聴き,必要に応じて書面、資料等の提出を求め裁判官と相談しつつ、解決のための助言や合意案を当事者に示し,最終的に合意できるように話を進めます。

調停委員との協議は個別に行われるので、相続人同士が調停室で顔を合わせるようなことは基本的にありません。
協議は1,2回で終わることは珍しく、3,4回、10回以上行われる場合もあります。
また、調停まで持ち込まれている相続問題は、調停委員が入ったからといっても簡単に解決するわけではありません。
1か月で終了するのは全体のわずか2%程度で、60%が6か月以上を要しています。
【遺産分割調停の傾向の詳細はこちら

このように家庭裁判所が介入しても多くは6か月以上もかかってしまう、それほど相続が一旦争族になってしまうと解決は簡単ではありません。
それを当事者間だけでまとめようとすると延々を争いが続くことになってしまう、、という事を認識する必要があります。

当事者間でまとめることが一番ですが、話し合いがつかず、互いの意見が大きく異なっているような場合は、相続人間の亀裂を深めないためにも早めに調停を申し立てて第三者に判断してもらうことが良いでしょう。

遺産分割調停における司法書士の役割

司法書士に家庭裁判所での代理権はございません。
代理人として当人に代わって相手側や調停委員と交渉、話しができるのは弁護士だけです。

司法書士ができることとして司法書士法第3条に「司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。」とあり、3条4項に事務として「裁判所若しくは検察庁に提出する書類の作成」と規定されています。
※行政書士が裁判所提出書類の作成、作成に関する相談に応じることは、例え外形上無料としても認められていませんのでご注意下さい。

これに基づき、遺産分割調停での司法書士の役割は、

  1. 遺産分割調停申立書作成
  2. 申立てに必要な書類(戸籍謄本等)の作成・収集
  3. 調停において提出する書面の作成(主張書面、上申書、合意案等)

になります。

遺産分割調停申立書

裁判所所定の申立書に必要な書類を付けて提出します。
必要な書類は、

  1. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  4. 相続人全員の住民票又は戸籍附票
  5. 遺産に関する書類(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し、土地・建物遺産目録、当事者目録等)等々

です。
必要書類は、申立の内容で変わってきます。

司法書士は、申立書の作成及び、必要な書類の作成、収集を行います。

調停中に提出する書面

調停において、調停委員は各相続人から意見、希望を聞きます。
調停は口頭で進められますが、うまく意見が伝わらなかったり、特別受益等々の問題が絡んで内容も複雑になるような場合、書面にして提出するよう求められることがあります。
【特別受益と寄与分についての詳細はこちら

その場合、言いたいことを整理して「主張書面」や「上申書」のような形で書面で提出することになります。

相続において主張する内容はケースによって異なるので、提出する書面は様々です。
特別受益、寄与分、遺留分に関する事だったり、遺産の分け方、不動産の評価額・評価方法、調停案等々いろいろあります。

書面を作成する場合、ただ言いたいことを書いただけでは調停委員には伝わりません。
自分が主張していることの正当性や適法性を調停委員に理解してもらう必要があります。

このようなときに、司法書士が書面の作成を全面的にサポートさせていただきます。
作成する際、ご依頼人としっかり協議をさせていただき、場合によっては資料の収集をお願いし、内容の修正、確認をしながら書面をまとめていきます。
例えば、相手側の特別受益を主張する書面を作成する場合、主張書面だけでなく主張内容を補強するために特別受益があったことを証するような資料をお願いすることになります。

作成した書面を提出した後、それに関して調停委員と話しをするのはご本人になります。
司法書士が代わりに調停委員に意見を述べることはできませんし、その場に同席することもできません。
書類は司法書士が作成しますが書類は依頼人名義の書類になります。
よって、ご依頼人の意見、主張、ご希望がしっかり反映されている書面を作成することが重要になります。
当所はそれを基本に書面を作成することを心掛けております。

調停が不調に終ると

互いに合意できず調停が不調に終ると、審判に回されることになります。
審判になると調停委員から裁判官にかわり、裁判と同じように関係者から意見を聞き、書面、資料等により最終的に決定をだします。
※審判において裁判官による聴き取り等が行われるとは限りません。
調停での記録、資料等で十分と判断されたら、審判に移行してすぐに決定がなされます。
よって、調停の段階で主張すべきこと、提出すべき証拠は全部出しておくことが重要です。

決定は判決と同じように強制力があります。
承服できないときは即時抗告を行い、次は高等裁判所で争われることになります。

手続き費用(税込)

遺産分割調停申立書一式:11万円~
※申立内容によって作成書類、資料の種類、数が変わります。

上記以外に戸籍・除籍謄本、住民票等の書類取得、登記事項証明書、郵便費用等の実費がかかります。

調停手続き中に提出する書面の作成:3.3万円~(項目毎)※申立を当所に依頼されている場合:2.2万円~(項目毎)